こんにちは。ケンゴンです。
今回は、読売新聞社会部「あれから」取材班の「人生はそれでも続く」です。
かつて新聞記事にて取り上げられ、話題となった方々の「その後」を追って書き続けられた連載がまとめられた本です。
当然ながら、新聞、雑誌等での報道のあとも、当人達の人生は続いて行きます。
そんな方々の22のエピソードが綴られています。
昔、テレビで「あの人はいま」と番組名で、主に一発屋芸能人のその後を追った、不定期で放送されていた特番がありましたが、書籍版「あの人はいま」といったところでしょうか。
意外な現在を期待してしまうものですが、話題となった出来事をきっかけにして大きく変化した現在や、想定外の現在を過ごしている方は殆どいなく、ある程度想定内の現在を生きられている方が殆どでは、というのが正直な感想でした。
唯一、千葉大学に飛び級入学し、物理学の研究者になった方が、現在はトラックの運転手をされているというエピソードには意外性がありましたが、殆どの方の「その後」のエピソードに、強烈な程の意外性はなく、それが逆にリアリティを帯びていたというのが、感想です。
中でも印象に残ったのは「生協の白石さん」のエピソード。
かつて、とある大学の生協の掲示板に貼られる「回答カード」上で学生達の質問に対してウィットに富んだ回答をする職員として話題になった「生協の白石さん」です。
まず、白石さんの生い立ち、経歴、学生時代のエピソードが綴られておりました。当時、白石さんの文章に興味と魅力を感じていた自分としては、読みいってしまいました。幼少の頃から大学生時代まで、「言葉」について周囲から一目置かれていたエピソードが紹介されています。その文才は注目される前からも片鱗をみせていたのだな、と思わせます。
就職活動では自分の好きな雑誌の出版社を受けたそうですが、落ちてしまったそうです。
パンの製造会社から営業職で内定をもらったそうです。しかし、自分には合わないと考えていたところ、ふと出身大学の親切な生協の職員の方を思い出したことをきっかけに、生協に応募し、採用に至ったとのこと。
回答カードでの遣り取りが有名となり、本(93万部発行)まで出版され、一躍「時の人」となった白石さん。その機知に富む文才を活かし、ひょっとして今では転身されて、文筆業をされているのでは?と期待し、読み進めていました。
ですが、現在は生協から転職されたものの、日本生協連というところで働いていらっしゃるとのこと。生協側へ供給する商品の開発を行う組織とのことですが、同じ生協関連業界のお仕事に携われているようです。文章に携わるお仕事ではなかった。
白石さんレベルの文才であれば、マネタイズの方法如何で、文章で身を立てることも十分可能なのではと思ってしまいます。しかし、それを生かさないのはもったいないと思うのは野暮なのかもしれません。生き生きとした表情で、現在も生協業界でお仕事をされているように見受けられる白石さんの写真が紙面に掲載されていました。
文章に携わるお仕事をされることは、全く考えておられず、現在のお仕事に「幸せ」を見出されているのかもしれません。生き方、幸せは人それぞれですので、それについてどうこう思うのは無粋、と思います。
「言葉」について幼いころから才覚がありつつも、就職活動では希望の出版業界には入れなかった白石さん。生協という進路に進み、ふとしたきっかけで職務上の「回答カード」の遣り取りが注目され、関連書籍がベストセラーになるも、現在も生協関連業界にて働き続けていらっしゃる、という事実にリアリティーを感じました。
報道された出来事、事件の延長線上で、現在もリアルに生きている人々がいらっしゃる。
順風満帆な方もいれば、平凡な方も、そして大きな葛藤や苦悩を抱えて生きていらっしゃるケースもある。
命が続く限り、とにもかくも人生は続いていく。
時に、人生の負のハイライトと呼べるような、とんでもなく辛い出来事もあります。それでも生きていく限り、その先の人生は延々と続いていく。そんな極シンプルなことに、気が遠くなってしまうような感覚を抱きつつ、日々、これからも淡々と丁寧に生きていこうと思った次第です。
以上、ケンゴンでした。
それではヒュッゲな一日を。